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『待つ思い』
優柔不断な性格だというなら、 強引に手を引いてもいいんだけど、
彼女の曖昧さは性分から来るものではないと一番知っているのは、俺自身だ。
さっきまで友達の顔で、他愛ない話をしながら、街をぶらついていた俺たちは
地元の人間しか知らないビルの谷間で、土曜の風に吹かれている。
「もうダメなの。多分終わりなの」
そう言って彼女があの男に逢いに行ったのが2ヶ月前。
「やっぱりダメだった。一人になっちゃった」
そう泣かれて彼女の自棄酒に付き合ったのが1ヶ月前。
「ありがとう」
キスの後、お礼言われて酷く虚しかったのが3週間前。
俺はいつだって彼女にとっていい友達で都合のいい男だった。
ただ、そう仕向けてきたのは自分だったのかもしれない。
愚痴られれば
「そんなことないさ。頑張れ」と裏腹の事を言い
寂しそうにしていれば
「飲みに行くか」
と誘い出した。
良かれと思ってしてきたんだから、当然彼女にとっては都合に合ってるはずなのだ。
それを、相手が居なくなったからと言って、急に彼女からのリアクションを求めたり
自分が優位に立ちたいと望んでも、無茶な話だとは判っているんだ。
けど。
「今度の誕生日さ、どっか行かない?」
と俺が切り出したのが1時間前。
「あ…… うん。そうね」
あの表情がずっと残ったままで居る。
それは決めかねているというよりも、あてもない何かを待っている顔で。
それは、だいぶ前に
「隆。気のない返事ね」
と去っていった前の彼女が
俺の顔を見ながら言ったことと同じだった。
人待ち顔。
俺が君を心に残しながら、前の彼女にしたように
君は自分の誕生日に、僅かな望みを残してるんだね。
でも、引く気はないよ。
待って居たのは俺のほうが長いんだから。
いつか「ありがとう」が「愛してる」に変わるまで。
待つのは慣れてるよ
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